夕張山地・芦別岳~岩尾根の上で見た槍の穂先

北海道の山

芦別岳(あしべつだけ:1727m)は北海道中央部に連なる夕張山地で一番高い山で、険しい山容を持つのが特徴です。

登山道は比較的手軽に山頂へ立てる新道コースと、岩稜険しい北尾根を歩く距離の長い旧道コースの2つがあります。折角芦別岳に行くんだ、その険しさを味わってみたいな!という事で旧道コースを歩く事に決めて、登山口のある富良野市の山部自然公園へ向かいます。

登山した日-2007.7.01

山部自然公園から目指せ芦別岳

富良野市街を登山口のある山部自然公園へ向かいます。天気が良ければ富良野盆地から屏風のように連なる芦別の山々を間近に拝めるはずなんだけど、上空は一面鉛色の雲に覆われて何も見えません。

国道38号を逸れて脇道を進んでいき、山部自然公園の施設を通り過た先は砂利道になっていて間もなく行き止まりとなりました。ここが芦別岳の旧道コース登山口。すでに登山客がいるようで車が数台停まっています。

あたりはなんだか湿っぽくて耳を澄ますと沢音が聞こえるのは、近くにユーフレ沢という川が流れているからでした。登山口にばびこる草を掻き分けながら奥へと入ります。

どうか天気が良くなって欲しい、そう心の中で強く願いながら。

旧道コース前半・沢沿いの登り

登山道はユーフレ沢に沿って続いていて轟音を上げる沢の音を絶えず耳にしながら登ります。水の流れを間近に感じながらの登りは清々しいんだけど、沢沿いだから登山道はアップダウンが微妙にあったり、岩場が水に濡れて滑りやすかったりと結構大変。

途中で歩くのが疲れて、一服しながら空を仰いでも相変わらずの曇り空。しかもだんだんガスが濃くなってくる感じ。天気大丈夫かなぁ・・・・?

沢沿いの道を進むこと約1時間、芦別岳唯一の山小屋・ユーフレ小屋へ向かう道と旧道との分岐に差し掛かります。そのまま旧道方面へ進んで行くと、やがてユーフレ沢本流から離れていき支流に沿っての急勾配の登りになります。

支流といっても枯れ沢で、水の流れがあっただろう場所は岩と砂が堆積したガレ場になっていました。道は不明瞭でうかうかしていると目印や踏み跡を見逃してしまい何度か道を迷います。

うーん・・・旧道コース、これは結構大変だぞ。ここ選んで失敗だったかな。

芦別岳旧道1 芦別岳旧道登山口へやってきました。

芦別岳旧道2 登山道の入り口は草ぼうぼう!僕の身長よりも高い草薮を掻き分けて登山道奥へ。

芦別岳旧道3 登り始めから水量豊かなユーフレ沢沿いを登っていきます。

芦別岳旧道4 小さな滝がいくつも。

芦別岳旧道5 ユーフレ小屋との分岐を過ぎると登山道はやや荒廃気味に・・・。この辺で何度か登山道を喪失。

旧道コース中盤・ダケカンバの森へ

途中で一人の登山者を追い抜いたあとは全く誰とも出会いません。森の深さと霧の深さ、そして登山道の不明瞭さも合わさってなんだか心細くてイマイチ気分が盛り上がりません。

標高1000mを超えたあたりまで来ると山はいよいよ険しくなって谷筋に残雪が出始めてきます。残雪のある所は決まってエゾリュウキンカやキンポウゲの鮮やかな花が咲いていて、灰色の世界に明るい色を提供してくれたので心がちょっとなごみます。

しばらく花々に見とれながら歩いていると僕の周りを覆っていた濃い霧がなんとなく薄くって明るみを増してきた気がしました。これはもしかしたら晴れるかも・・・!

予感は的中!登り続けていくと、突然辺りが明るくなったと同時に霧が晴れてカッと強烈な日差しが降り注いできたのです。雲一つない真っ青な空が夕張の山々を覆い、振り返れば真下は雲の海。やった!雲を抜けたぞ。

その頃にはダケカンバの原生林に突入していました。白い樹肌に鮮やかな緑の葉をいっぱいに付けたダケカンバの森と真っ青な空が見せる爽やかな景色に包まれて気分高揚!嬉しくなります。

やがて前方、木々の向こうに巨大な岩の塔が見えてきたそれは芦別岳のシンボル夫婦岩でした。夫婦岩が見えれば主稜線の北尾根はもう間近です。

芦別岳旧道6 ガスに煙るダケカンバ。

芦別岳旧道7 見えてきた夫婦岩。

芦別岳旧道8 ウコンウツギ。

芦別岳旧道9 ダケカンバの純林と残雪。

芦別岳旧道10 ダケカンバと青空。夏の色ですね。

芦別岳旧道11 主稜線の北尾根へ到達。

芦別岳旧道12 振り返れば雲海に包まれた富良野盆地の向こうに十勝岳がそびえていました。

旧道コース後半・険しい岩尾根で見た芦別岳の尖頂

主稜線の北尾根までたどりつくと一気に展望が広がります。

雲海広がる富良野盆地が眼下に展開し、遠く十勝や大雪の山々をも望めるという壮大な光景。森林限界に達した登山道の周りは高山植物が花真っ盛り。

そんな光景ばかり目に入るもんだから、僕のテンションはどんどん上がって足取りも早くなります。 北尾根に出てからは緩やかな登りが続いて小さなピークを踏みます。そこで突如目の前に芦別岳の姿が飛び込んできました。

山頂部分は槍のように鋭く尖っていて険しく厳つい!間も無くあの尖頂に立てるんだ、と思うとテンション最高潮で先を急ぎたい気持ちでいっぱいになります。 ところがこの北尾根が想像以上に体力を要する所で、ギラギラ照りつける日差しも加わって僕の体力を奪いにかかるのです。

何処か涼しい所で一服しようにも既に森林限界、木陰は無く左右絶壁の稜線に逃げ場はありません。

ガマンして登り続けていくと芦別岳は少しずつ視界に大きく映ってきます。でも距離は一向に縮まる気配は無くまだ遥か先。北尾根を半分くらい歩いた所で僕の足取りは疲労で止まりがちになってしまいます。乱れる呼吸、底を尽き始めた水、頭がクラクラしそうな暑い日差し。 そういえば昔にもこんな事があったような・・・・ふと学生時代縦走した北アルプス槍ヶ岳の記憶を思い出しました。

それは夏休みの8月、槍ヶ岳を登頂して三俣山荘へ向かっていた時。同じように暑い日差しの陽気で、僕は途中の尾根で完全にバテてしまいました。空っぽになった水筒、もう一歩も動けない疲労、まだ遥か先の目的地。絶望感が漂う中で来た道を振り返って見上げた槍ヶ岳・・・。その時に見た槍ヶ岳と今見る芦別岳は姿形がそっくりでした。ついでに今自分が置かれている状況も当時と似てたので、なんか可笑しく思います。 当時の記憶と今置かれている現実に相似点があった事を発見したことで心がリセットされて重い気持ちが少し楽になります。

何だかんだでもう半分以上北尾根を制覇しているんだ。あとひと踏ん張り、ガンバレ!

芦別岳旧道13 お花畑が続く北尾根。薄紅色の花はシラネアオイ。

芦別岳旧道14 北尾根から西側(崕山方面)緑の山並みばかり。夕張山地ってなんて山深いところなんだ。

芦別岳旧道15 北尾根を進んでいくと遠くに険しい頂が見えてきました。あれが芦別岳です。

芦別岳旧道16 北尾根を進んでいくと遠くに険しい頂が見えてきました。あれが芦別岳です。

芦別岳旧道17 迫る芦別岳。近づけば近づくほど険しい山容だなあ。

芦別岳を全身で受けて

いくつもの小ピークを越えて、北尾根もいよいよ最後という所で奇怪な形の岩の集合体が行く手を阻みます。今回のコース最大の難所、キレットです。

鋭く切り立った岩場が連続するキレット。慎重に進んでなんとか越えると急傾斜の登り道で一気に登り切るとなだらかな肩にたどり着きます。ハイマツとお花畑が一面広がる中を雪田がまだら模様に残るその場所はまるで天国の景色。でもすっかり疲れきっている僕にその天国の景色を眺める余裕はもうありません。

見上げれば芦別岳の頂がもうすぐ目の前なのに、巨大な岩壁のように立ちはだかる姿に臆してこれ登れるのかなぁと弱気の状態でした。でもコレを登らなきゃどうにもなりません。

最後の登り。ジグザクの胸を突く急登は辛い事この上なしで気が遠のきそう。山頂に居る登山者の姿がすぐ上に見えるけれどなかなかたどり着かない。この最後の十数分の登りが本当に辛くもどかしい。あと20m、10m、5m・・・0m!!やっとたどり着いた!しばらくは疲労で放心状態。呼吸が落ち着いて気分が少し楽になったので芦別岳からの展望をゆっくり眺めてみます。

夕張の山々、大雪、十勝、富良野盆地・・・・360度見えるのはただただ絶景ばかり。その中で僕の目から離れなかったのは踏破してきた北尾根でした。まるでカミソリの刃のような鋭さで空を切り裂くように連なる北尾根。あんな険しい所を必死になって歩いてきたんだ・・・と思うと達成感で目頭が一気に熱くなってきました。

それを冷ましてくれたのは山頂を吹きぬける小風。あの時浴びた風は本当に心地よかったなぁ・・・。

芦別岳旧道18 芦別岳、ずいぶん近づいてきたね。

芦別岳旧道19 奇怪な岩の塔が連続するキレット。

芦別岳旧道20 芦別岳はもう間近なんだけど体力がもう限界・・・。

芦別岳旧道21 芦別岳山頂をズーム。

芦別岳旧道22 踏破してきた北尾根はカミソリのように鋭くて険しかった。

芦別岳旧道23 富良野盆地を見下ろして。

芦別岳旧道24 芦別岳最後の登り。キツくて苦しくてもう死にそうだ。

芦別岳旧道25 やっとたどりついた芦別岳の絶頂!ここまでの道のりは本当にキツかった!

芦別岳旧道26 山頂から見下ろす新道コース。帰りはこの尾根を下って山部自然公園へ降ります。

芦別岳旧道27 新道コースから望んだ北尾根は深く切れ落ちた谷の向こうに険しく連なっていました。あの尾根の上を良く歩いて来れたなあと自分に感心してしまいます。

芦別岳写真ギャラリー

※クリックすると拡大します。

芦別岳登山地図

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