南アルプス・北岳~真夏色の山稜へ【後編】

南アルプス

『南アルプス・北岳~真夏色の山稜へ』の後編です。

ご来光の一瞬、感動の一瞬

翌日。朝3時に起きて外へ出ると寒くてブルブル!下界では熱帯夜の寝苦しい毎日だったのがウソみたい。まだ真っ暗闇にも関わらず北岳や間ノ岳方面にはヘッドランプの小さな光が点滅していて、ご来光目当てでもう登ってる人が居るみたいです。僕らも初めは北岳山頂でご来光を拝もうと思っていたけど、身体がダルいのでテント場からご来光を待ちます。

真っ暗闇だった空は少しずつ明るくなって、眼下に煌めく甲府盆地の向こうに富士山の黒いシルエットが現れました。暗灰色の水墨画のようなその景色に見惚れていると、東の空がだんだんオレンジ色に明るくなってきました。

ふと見渡すと北岳山荘のテラスやテントサイトにはご来光を待ち構える登山者で一杯で、三脚を立ててカメラをセットしてスタンバってる人も。

午前4時56分。眩しい光線が遠い地平線からパッと差し込んだかと思うと、一瞬にして僕らの周りの全てのモノを紅く染めました。ご来光の一瞬です!華やかだけど荘厳な瞬間はもう幾度と無く見てきたはずなのに、何度見ても最高でいいですね!!

幸先の良いスタートで始まった北岳登山二日目。ご飯を食べ終わったらすぐにテントを片付けて北岳へ向けて出発です。

北岳20 午前4時、テントから外に出ると外はまだ暗くて月が輝いていました。

北岳21 白み始めた空の向こうにそびえる富士山。

北岳22 黎明の中白根山、間ノ岳。

北岳23 朝焼けと甲府盆地。

北岳24 ご来光を待つ登山者。

北岳25 ご来光の瞬間!辺りから『おお~っ』と歓声が湧きます。

北岳26 朝日差し込む北岳。

目指せ!日本第二のてっぺんへ

北岳山荘から尾根へ出ると西側の展望が開けて幾つもの山襞の向こうに信州飯田の盆地や、屏風状に連なる中央アルプスを望めて思わず歓喜。そこから目線を北へずらしていくと、御嶽山や乗鞍岳、槍・穂高連峰の北アルプス、さらに立山連峰まで拝めます。まるで日本中のありとあらゆる山を手中に収めたような爽快な気分!

南側は足元から続く長い山稜の向こうに中白根山(3055m)と間ノ岳(3189m)が重厚感溢れる山容として鎮座していて、これらに取り付いている登山者の一群は小さな点でしか見えません。

行く手には目指す北岳が大きく立ちはだかっていて、標高差はおよそ200m。鋭く尖った頂きは天を貫く剣に見える一方で、ゴツゴツした岩場は硬い鎧を纏って厳つい山にも見えます。だからわずか200mほどの標高差なのにそれ以上ありそうな錯覚に襲われてしまうのです。

北岳山荘から少しの間は比較的緩やかな登り坂で、尾根筋は爽やかな朝の風が吹き抜けて心地良いし、絶えず大パノラマを眺望出来るから登山が楽しくてたまりません。地面には可憐な花々が次々と現れるから視線が一向に定まず気持ちがちょっと浮つき気味になります。

北岳27 中白根山と間ノ岳。

北岳28 北岳を目指す登山者たち。

北岳29 ハハコヨモギ。

北岳30 中央アルプスの屏風のような連なり。

北岳31 北岳の登り途中から望む中白根山と間ノ岳。

真夏色の北岳山頂

北岳山頂直下にある西側斜面まで来ると、山陰になって日差しが遮られると同時に目も眩む岩場が連続して体力を奪いにかかります。もし足を滑らせたら急斜面を転がり落ちてただでは済まない場所だから、さっきまでの浮ついた気持ちを引き締めて慎重にクリアしていきます。

岩場を越えて山頂上部まで登ると再び日差しが降り注いで景色が明るくなってきました。そして勾配が緩んだら平らな丘が見えてたここが北岳山頂。登りから開放されて休める!と思っていたら、山頂の光景を見てびっくり!

山頂は大勢の登山者でごった返していたのです。限られた北岳山頂のスペースにひしめき合う登山者の光景はさながら物置の上に人がいっぱい乗っかってる『イナバ物置』のCMそのもの。

僅かなスペースを見つけてザックを降ろしてひと休憩。日本第二位のてっぺんから眺める展望は最高で、圧倒的な高度感を得た絶景が360度広がっていました。

山頂に留まっている間も時は過ぎて日差しはどんどん高くなって暑くなってきました。さあそろそろ下山を始めよう。

北岳32 北岳山頂間近まで来ると荒々しい岩場の連続になります。

北岳33 登山道はどこも人、人、人。ひとだらけ。

北岳34 岩場を登りきれば傾斜が緩やかになって山頂はもう目と鼻の先。

北岳35 近づく北岳山頂。しんどいけどあともう少し。

北岳36 息を切らし切らし辿り着いた山頂は人で溢れかえってちょっと落ち着けなさそう。

草スベリで急下降

ガレ場とお花畑が連続する北岳北側の尾根を駆け下りる事およそ30分程で北岳肩の小屋へ降り立ち、その先はハイマツとザレ場だけが広がる尾根道で、鋭い甲斐駒ケ岳と、重厚な仙丈ヶ岳を遠望しながらの見晴らしのいい景色が広がっていました。

小太郎山と草スベリとの分岐点へ到着したら、白根御池小屋へ向けて草スベリを一気に下るけれどこの道がちょっと嫌な感じ。直線距離わずか1kmほどなのに標高差500mもある地獄の急斜面だからです。

きっと膝や関節が痛くなるんだろうなぁ、いやだなぁ・・・。でもここを降りなきゃ帰れないし覚悟を決めて草スベリへ足を踏み入れます。

草スベリは上部は瑞々しい草原が広がり、高度を下げていくに連れて草原からダケカンバの森へと変化していきます。長年の風雪に虐げられねじ曲がったダケカンバと草原が見せる不思議かつ幻想的な風景はなかなかのもの。でもジグザグの急下降の連続だから足が痛くて風景を見る余裕はなかなかありません。

しかも森の中は蒸し暑くてたまらない!そんな中この草スベリを登ってくる登山者も居るんだから、きっと僕達以上にツラい筈です。

北岳37 肩の小屋から見上げる北岳。

北岳38 肩の小屋広場から仙丈ヶ岳(左)、甲斐駒ケ岳(右)を望んで。

北岳39 草スベリと右俣コースの分岐点は草原に包まれています。

北岳40 草スベリを下降していくと草原からダケカンバの潅木帯へと変化。

北岳41 草スベリから見上げる北岳。さっきまであのてっぺんに居たのにすっかり遠く離れてしまって。

広河原下山

草スベリをジェットコースターのように駆け下りていくと、見えていた北岳は姿形を変えながらだんだん遠くなっていきます。標高およそ2200m付近に建つ白根御池小屋へたどり着いたのは正午前。お昼の時間帯だったから小屋は登山者で相変わらずの賑わいです。

ここからも北岳の頂きを見上げることができるけど、いつの間にか湧き始めた雲に隠れようとしていました。昨日も同じ時間にガスが湧きそして今日も同じようにガスが湧く・・・ありふれた夏山の天気の移り変わりです。

白根御池小屋を後にして、終点の広河原までの残り2時間の登山道を降り始めると、辺りはシラビソやコメツガの鬱蒼とした森が延々と続いて、北岳はおろかすべての展望が木々によって遮られます。

ここでの下りは草スベリほどキツく無いものの、すでに足や関節が痛みまくってるから草スベリ以上に辛く感じました。苦しいけどもう少しの辛抱。そして大樺沢のコースまで降り切れば、勾配も緩んでグッと楽になります。

広河原山荘まで戻って来て、その先の吊り橋を渡れば広河原のバス停で長かった登山はこれで終わり。吊り橋を渡る途中に振り返って北岳を望むとすっかり厚い雲に包まれ、大樺沢に横たわる雪渓の末端が僅かに見えるだけでした。(終)

北岳42 草原と青空とダケカンバ。こんな組み合わせの景色が草スベリの随所で見られました。

北岳43 草スベリを下り続けてようやく白根御池小屋のテント場へ。

北岳44 白根御池小屋のテントサイトから草スベリの急斜面と北岳を右に見上げます。

北岳45 白根御池小屋へ到着。綺麗な小屋です。

北岳46 広河原まで無事に下山できました。ここから北岳を仰いだけれど雲に覆われて見えませんでした。

北岳写真ギャラリー

※クリックすると拡大します。

北岳登山地図

登山に要した時間 / 一日目約8時間+二日目約8時間 合計16時間

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