登山した日-2010.10.06~08
長野市~白馬村間の県道31号線『オリンピック道路』の山道をバイクで走ってると、視界がパッと広がって屏風状に連なる山並みが目に飛び込んできました。
北アルプスの白馬連峰だ!ここは僕が生まれて初めて登山をした輝かしい場所でもあるし、学生時代のめり込んだ『グリーンパトロール』というアルバイトで夏の一時を過ごした青春の地でもあるのです!!
朝日岳の玄関口、蓮華温泉へ
大学卒業後は色々忙しくて白馬連峰をはじめ北アルプスへはすっかり行かなくなりました。関東から微妙に遠いし、他の山ばかり行くようになってしまったからです。もう10年近くも行ってないや・・・たまには行ってみようか、懐かしさを味わいに。
という事でやって来た白馬村。天気は良いけど白馬連峰は雲に隠れて見えなくてちょっと残念。でも今見えなくても山に登ればその山並みを存分に見れるんだから無問題。早く登山口の蓮華温泉へ向かおう。
白馬村を越えて小谷村に入り、国道148号線を折れて県道505号線へ入ってひたすら山道を進むと終点の蓮華温泉ヒュッテへたどり着きました。辺りはすっかりガスに包まれて小雨を伴った生憎の天気となってしまいました。
時刻は午後3時過ぎ。秋の日暮れは早くて、天気も悪い分急速に薄暗くなろうとしています。
蓮華温泉ヒュッテでテント代300円を支払ってテント場へ向かいます。テント場は5~6分歩いた所にあって、鬱蒼とした森の中にぽっかり草地が開けたような雰囲気です。ヒュッテに響き渡る温泉客の賑やかな声はここへは届かず静寂そのもの。この日テント場は僕以外誰も居ませんでした。
テントを張り終えても依然降る霧雨に外へ出れなかったので少しウトウトしてふと目が覚めた時、日はすっかり落ちていました。雨は止んだみたいなので外へ出ると霧は晴れていて、木々の間から何処かの山並みの黒い影がかすかに見えました。
明日は絶対晴れて欲しい。それだけを願って再び眠りに就きます。
下り道が続く兵馬の平
翌朝4時。テントから顔を出すと昨日の悪天がウソのように星が輝いていました。でも寒い!ブルブル!熱いコーヒーを飲んで身体を温めながらカフェイン摂取で身体をシャキッとさせて、パンをかじりながら出発の準備を始めます。
さて、今回の登山計画はこんな感じです。
【1日目】蓮華温泉→白高地沢→五輪尾根→朝日岳→朝日小屋でテント。
【2日目】朝日小屋→雪倉岳→白馬岳→村営頂上宿舎でテント。
【3日目】村営頂上宿舎→小蓮華山→白馬大池→蓮華温泉。
久しぶりに担ぐ荷物はずっしり重くて、身体が重さに馴れず足元がフラフラになりながら5時30分にテント場を後にしました。
序盤は平坦な木道が続く暗い森の中で、鉱山道との分岐を過ぎるとだんだん下り道になります。どんどん下ります。あれっ、登山スタートしたばかりなのに何でこんなに下らないといけないの??と思わず愚痴をこぼすくらい下っていくんです。
時々ブナの木々の間から眼下に草原の広がりが見えました。斜面を下り切って立ったこの草原は兵馬の平と呼ばれる高層湿原。夏なら花々に包まれる楽園なのに、今は枯れ果てた草叢しか広がっていませんでした。その表面にはうっすらと霜が降りていました。
ここからは朝日に輝く朝日岳や五輪山を望むことが出来ます。山肌はすっかり紅葉に染まっていて、もうすぐあの中に身を置けるんだ。と思うと気分が高揚します。
辛い登りの先で見た錦色の森
兵馬の平は平坦で木道の登山道だから子供や老人でも難なく歩ける筈なのに思うように進めません。朝露と霜に覆われた木道は氷の上を歩いているようにツルツルでちょっとでも足の重心を置き間違えると転倒してしまうのです。
滑らないように恐る恐る歩き続けて兵馬の平を越えた時には、僕のズボンやお尻、ザックは転倒時に浴びた泥ですっかり無残な状態になっていました。
兵馬の平を過ぎると本格的な登山道。一旦沢に降りる為、またもや高度を下げていきます。一つ目の鉄橋を渡ると登り返しになってしばらくすると森が切れて轟音響く広い川岸に立ちました。白高地沢です。
水量豊富な川には鉄パイプで組まれた橋がかかっていて、ここを渡ると五輪尾根へ取り付きます。因みにここまで要した時間は予想外の3時間。しかしこれからが登山本番です。朝日岳までの標高差1000mをここから一気に駆け上がるからです。
登りにさしかかったとたん胸を突くキツイ登りになりました。見晴らしも無い森の中、延々と続くんじゃあないんだろうか?とふと錯覚してしまいそうな単調な登りと景色が続きます。
疲れてきたので足を止めて耳を澄ましてみました。すっかり日が高くなった空は明るいけど、風は無いから森の中はとても静か。登山者は居ないし、鳥の鳴き声もしないし、さっきまでしていた川の轟もありません。
時間の経過も忘れてひたすら登り続けると景色に変化が起きます。森を抜けて草原地帯へ出ると冷たい風を全身に受けました。と同時に目の前が開けて白馬岳や雪倉岳の頂きが姿を見せたのです。
そしてもう一つ現れたのが、紅葉で錦色に染まった山々の景色でした。