南八ヶ岳縦走記~夏色の岩尾根を駆ける【後編】

八ヶ岳/蓼科周辺

登山した日-2008.7.12~13

登山日記
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キレット越え

権現岳を後にしてキレットへ向かいます。

権現岳の肩のはずれまで行くと足元に長さ15mほどのハシゴが現れて、上から覗きこむとかなりの高度感で怖くて足を出すのに躊躇します。

勇気を振り絞ってハシゴに足を掛けて慎重に降下。ここで手足を滑らして落ちたらただでは済まない恐怖感と、目も眩む高度感で背筋がゾクゾク。慌てず行けばなんてことは無いんだ。そう心の中で言い聞かせながらハシゴを降り立った時は安堵でほっと一息。

安心したのも束の間、ハシゴから先は険しい刃の稜線歩きで、日差しがジリジリ照りつけるから暑い!既に森林限界だから日陰なんて無いし、稜線上だから逃げ場も無いしひたすら我慢しながら歩き続けて、キレット小屋付近まで来ると樹林帯になってやっと日差しから逃れる事が出来ました。

行く手には赤岳の頂きが壁のように立ちはだかっています。つまりここから標高差400mの地獄の赤岳の登り返しが待ちかまえていて、ホッと一息する間も無く赤岳へ取り付くと、直登の連続で足元を見下ろすとキレットはもう遙か下。あまりの高度感に足がすくんでちょっと怖い・・・。こんなおっかない所は早く越えてしまおう。登り詰めると勾配は緩やかになって文三郎尾根登山道との分岐点へ到着して、赤岳山頂はもう目前です。

権現岳を過ぎると一本の長いはしごが出現します。ちょっと怖い。
ハシゴを降りて権現岳(左)とギボシ(右)を一望。
大きくそびえ立つ阿弥陀岳(左)と赤岳(右)。
遠く離れてしまった権現岳。
赤岳(右)と阿弥陀岳(左)は近づくに連れて険しい山容を見せるようになります。
夏空とダケカンバ。
キレットから見上げる赤岳。これからこの岩の塔を登り返します。キツそう・・。
赤岳山頂直下へ到達。ここまで来れば山頂まであと10分。

二つの絶頂

文三郎尾根コースと合流して最後の岩場を登る事およそ10分で赤岳の頂上へ立ちました。

てっぺんからはこれまで歩いて来た権現岳~キレット間の刃の稜線や、横岳~硫黄岳の巨大で厳しい山並みはもちろん日本アルプス、富士山だって拝める極上の展望!

でもこんな素晴らしい眺望が広がっているのにいまいちテンションが上がらないのは、次に目指す阿弥陀岳が僕の目の前にあまりにも巨大な岩壁となってそびえ立っていて、今日の早朝からツラい山行を強いられすっかりバテ気味の僕には、ハードルが高すぎて登り切れないんじゃないかっていう不安に襲われたからです。

それでも行ける所まで行ってみよう・・・。不安を胸に抱いたまま赤岳山頂を離れました。

山頂から高度を250mほど下げて、赤岳~阿弥陀岳の中間に立つ中岳(2700m)を踏んで阿弥陀岳の傍まで来て見上げても山頂が見えないくらい急斜面。果たしてこの巨大な岩の塔を登り切れるかなぁ・・・?

でも行かなきゃ。阿弥陀岳へ取り付いて垂直の岩壁を少しづつ登っていきます。足を一歩上げるだけで息が切れてあまりのキツさに途中で頭の中がぶっ飛んでしまいこの辺りの記憶は曖昧で、いつの間にか阿弥陀岳山頂に立っていた感じでした。着いた直後はしばらく疲労で放心状態で、疲れが幾分取れてから山頂からの光景を眺めました。

赤岳山頂。
赤岳山頂からの展望は素晴らしくて阿弥陀岳・硫黄岳や天狗岳といった八ヶ岳の名だたる頂きを一望できます!
北側の景色は赤岳から横岳、硫黄岳まで続く険しい山並みが広がっています。
赤岳の下り途中で望む阿弥陀岳。
ガレ場に咲くミヤマシオガマ。
阿弥陀岳頂上部。この急勾配を果たして登りきれるのかな。

長大な御小屋(おこや)尾根

阿弥陀岳からの眺望も赤岳同様素晴らしく、どこへ視線を持って行っても飽きない景色ばかり。赤岳で見た景色の違いといえば空が曇って空気が霞んでいるくらい。

あっ!いつの間にか天気が悪くなってる!頭上の雲が入道雲のようにもくもくと湧き上がってどんどん広がっているのが見ていて判ります。これはもしかしたら雷雨になるかもしれない。

となると急いで山頂を離れた方が賢明かも。疲れも癒えぬまま阿弥陀岳山頂を後にして、西側に伸びる御小屋尾根へ向かって下山します。

この尾根を下り切ればゴールの舟山十字路であと少し!と言いたい所だけど、御小屋尾根は下りで3時間半もかかる一筋縄ではいかない長大な尾根です。

阿弥陀岳山頂から少し離れた所に御小屋尾根への降り口があってそこから下を覗き込むと・・・思わず足がすくむ急下降の登山道。滑り落ちないようにと一本のロープがかかっていたけど、足場は長年の登山者の往来で深くえぐれているじ、地面はザレ場で滑りやすく降りるのが大変です。

このザレ場を下り切るとガレ場のジグザグの道が続き、勾配が幾分緩んでくる頃に樹林帯へ突入します。曲がりくねったダケカンバの木々の間を縫って進むと薄暗い針葉樹の森になって、途中で遠くからゴロゴロと雷鳴が聞こえるようになると、いよいよ雷が迫ってきたんだ!と嫌でも足取りを早めようと力を振り絞るけど、足はもう疲れ切ってるから速度が出ません。

心の中で八ヶ岳の神様にお祈りを唱えます。『どうか下山するまで天気が持ってくれますように・・・』

阿弥陀岳山頂から望む赤岳。
右に赤岳、左に横岳。
阿弥陀岳山頂を離れて御小屋尾根へ。ここから右に進んで尾根を下ります。
遥か下まで伸びる長大な御小屋尾根。

御小屋尾根下山

体力気力を振り絞って全速力で御小屋尾根を歩いているのに、一向にゴールへ近づいている気がしないのは単調な針葉樹の森がいつ終るとも無く続くから。長大な御小屋尾根と鬱蒼とした森が見せるイヤな錯覚です。

それでも歩き続けるといつかは変化が起きます。御小屋尾根を下り始めておよそ2時間、美濃戸口との分岐が見えてゴールに近づいているんだと初めて感じた瞬間です。ここまで来ればゴールまであと1時間。あと少しだ・・・。

そして今まで続いていた薄暗い森も明るいカラマツの人工林になり、このカラマツ林を抜けると舗装された林道に出てゲートと駐車場が見えてゴールの舟山十字路へ到着しました。

ああ・・・もう疲れた。急いで家へ帰ろう。ザックを降ろしてバイクに荷物をくくりつけ始めて間もなく、大粒の雨が降り始めてあっという間にびしょ濡れ。ちくしょう!何でこんなタイミングに雨なんて降るんだ。と空が恨めしく思ったけど、よく考えて見たら下山時にした『下山まで天気が持ちますように』というお祈りは八ヶ岳の神様がちゃんと聞き入れてくれていたのです。これで空を恨むなんて罰当たりかも。(終)

深い森が続く御小屋尾根。ずっとこんな感じの中を歩き続けます。

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表南八ヶ岳登山地図

※この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の2万5千分の1地形図を使用しました。(承認番号 平22業使、第609号)

データ

登山に要した時間 / 一日目4時間、二日目9時間 合計13時間

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