乾徳山は自然の変化に富んだ楽しい山だった

奥秩父

初秋漂う時期に山梨市三富地区から乾徳山を登山してみました。国師ケ原や扇平といった牧歌的な草原地帯や、険しい岩場や深い森といった多彩なフィールドが魅力的な山です。

登山した日-2014.9.8

プロローグ

学生時代のある日の事。奥多摩の山々を登り終えてバス停で休んでいると、一人の登山者に声を掛けられました。見た目20代後半くらいのその若い登山者は都内で働く男性で、とある山岳会に所属しているとの事。帰りのバスや電車の中でいろいろ話しをするうちに意気投合し、近いうちに一緒に山へ行こうということで話は進んで行きます。

それから数日後、この男性から『乾徳山へ行こう』と連絡がありました。と、ここで僕は初めて”乾徳山”という山の名前を耳にします。

その時は聞いた事もない山だったから、いったい何処にあるのか想像できない山でした。で男性に訊くと『乾徳山』は山梨県にあって、山岳会や登山サークルの新人山行でよく登られている人気の山だと言うんです。

結局日にちが合わずその男性と乾徳山へ行くことは出来なかったけど、この事で乾徳山の存在を知り、登山雑誌などを読んでいる時に目に付く乾徳山の記事の多さに初めて気がついた時、ようやくこの山が登山者に人気の山なんだという事を知りました。

それから10年経ったある日ふと乾徳山を思い出したので登ってみる事にします。『乾徳山』が人気だという理由を直接感じてみたいと思って。

乾徳山の登山口、三富村の徳和集落

自宅のある熊谷市から国道140号線をひた走り、埼玉山梨県境の雁坂トンネルを抜けると山梨市の旧三富村へ入りました。そこから長い下り坂を走り続けてそろそろ平坦になってきたなぁってあたりで『乾徳山登山口』の大きな看板が見えてきました。

看板から小道へ入り、徳和集落内を走る細い路地を突き進んで行くと登山口の駐車場へ到着。時刻は午前6時過ぎで駐車場にはすでに車が2台が停まってました。

台風が接近中ということで天気は芳しくありません。因みに今日の天気は曇り。登山中は天気が持つことを願いながら登山開始です!

乾徳山秋1 国道140号線から乾徳山登山口へ。

乾徳山秋2 駐車場へ到着。

真っ暗なスギの人工林を越えて

駐車場から砂利道の林道を15分程歩くと乾徳山の登山口が見えてきて、中へ進むとすぐに登りが始まります。辺りは深いスギの人工林でまだ朝早いのと、天気が悪いのと、森の中ということでとても薄暗くてまるで夜みたい。

林道を歩いていた時は平行して流れる徳和川の沢音で賑やかだったのに、登り続けていくとその沢音も消えてなくなり静寂に包まれます。

途中立ち止まって耳をすましても沢音はおろか鳥の鳴き声も、虫の音すらもしません。なんだか薄気味が悪いな・・・そんな不安を紛らわそうと辺りをキョロキョロしてもスギの木以外何にも無い陰鬱な世界。

と思ってたら地面にいろんな姿形のキノコが生えているのを見つけます。いつもは見落としてしまいそうなその小さくて地味なキノコたちを見付けて、『これ食えるのかな?』『毒に当たったらどのくらい苦しいんだろう?』みたいな事を想像する事で幾分不安な気分が紛れたような・・・。

乾徳山秋3 乾徳山の登山口。

乾徳山秋4 登り序盤は薄暗いスギの人工林の中。

乾徳山秋5 薄暗い森の中はいろんなキノコが地面から顔を覗かせていました。

乾徳山秋6 ここにもキノコ。

乾徳山秋7 あそこにもキノコ。

乾徳山秋8 いろんな種類のキノコがあってもそれが一体何のキノコなのか判らない・・・食べられるのかな?それとも毒があるのかな?

人工林の森を抜けて牧歌的な光景広がる国師ヶ原へ

順調良く高度を稼いでいくと、やがてスギ人工林にアカマツやナラが交じるようになり、そしてカラマツも出始めた辺りで登が幾分楽になって『錦晶水』と呼ばれる水場へ到着しました。

身体も火照ったし喉も乾いたしここでちょっと休憩しよう。ホースからこんこんと流れ出る水はとても美味しそうで手にすくってみたら、コケの欠片みたいな不純物が混じってるものの飲んで見ると結構うまい!ついついガブ飲み。

ノドも潤って疲れも取れたからさあ出発。錦晶水を後にするとすぐに勾配は平坦になって行く手の森が開けると同時に爽やかな光景広がる国師ヶ原へたどり着きました。

深緑色のカラマツと、眩しいほど白い樹肌を見せるシラカバの木が点在する光景はまるで北欧みたい。とは言っても北欧なんて行ったことないんだけど。でも昔から持ってる北欧に対するイメージが国師ヶ原を見てそう思わせたようです。

木々の向こうには目指す乾徳山がとんがった姿で悠然とそびえて待ち構えていました。

乾徳山秋9 まだまだ登りは続きます。

乾徳山秋36 道端に咲いていたのは鮮やかな朱色のフシグロセンノウ。

乾徳山秋10 錦晶水へ到着。水垢みたいなのが浮いてたけど飲んだら美味しかった。

乾徳山秋11 錦晶水を過ぎると起伏が緩やかになってきました。何やら景色に変化が起きそう。

乾徳山秋12 突然森が切れて景色が一変。国師ヶ原へ到着!国師ヶ原はカラマツやミズナラの明るい森に包まれた爽やかな場所で向こうには乾徳山南面の頂が見えます。

乾徳山秋13 初秋の高原を彩るマルバダケブキ。

乾徳山秋14 国師ヶ原の真ん中にある分岐点へ到着。ここから扇平の草原へ向かいます。

初秋漂う扇平の草原

国師ヶ原から次は『扇平』を目指してシラカバ広がる平坦な森を進むと、勾配が上がって急な登りにさしかかります。

息を切らしながら登り続けると森から抜けて、一面カヤの草原に出ました。なおも続く急斜面を登っていくと草原の真ん中に鎮座している巨大な岩(月見岩)の前に到着しました。

月見岩の周りは人が座れそうな岩がいくつかあって休憩するにはもってこいの場所。見晴らしも良くて扇平の草原を一望出来るほか、甲府盆地や富士山の展望まで拝めるなかなかの好スポット。景色だけじゃなくて草原に咲く花々も楽しめるのでここにずっと居ても飽きません。

扇平まで来れば乾徳山山頂まであと一時間。その山頂のある方角を見上げると乾徳山南面の頂が手の届く所まで近づいているものの、山頂そのものは奥に隠れて見えないまま。お菓子を食べて水を飲んで体力をある程度回復させて、いよいよ乾徳山最後の登りに取りかかります。

乾徳山秋15 扇平は茅に覆われた広い草原で見晴らし抜群。

乾徳山秋16 扇平に咲いていたマルバダケブキ。

乾徳山秋17 こちらはアザミ。

乾徳山秋18 ウメバチソウの白い花がかわいいです。

乾徳山秋19 コウリンカ。オレンジ色の菊の花。

乾徳山秋20 ツリガネニンジン。

乾徳山秋21 カワラナデシコも!扇平は秋の花々に彩られてました。

乾徳山秋22 扇平のどまんなかに鎮座する月見岩。岩の周りはちょっとした広場になってて休憩するのにもってこいの場所。ここでちょっと一息入れよう。

乾徳山秋23 初秋の高原を彩る月見岩から南を向けば甲府盆地と富士山のパノラマ風景が!天気がイマイチなのであまりクリアに見えませんがそれでも気分爽快。

乾徳山秋38 シカが姿を見せてくれました。

乾徳山秋24 乾徳山方面を見上げます。乾徳山の頂きはあの山の向こうでもう一頑張り。

山頂で感じた乾徳山の魅力

扇平の月見岩を過ぎるとシラビソ・コメツガの針葉樹の森へ突入。と同時に胸を突くキツイ登りが連続するようになりました。

岩の表面はコケっぽくてしっとり濡れていて滑りやすいから、歩くのに気を遣います。何箇所か鎖場もあって両手を使って踏ん張りながらの登りもありました。先ほどまで居た『国師ヶ原』『扇平』の牧歌的で爽やかな景色から、陰鬱な針葉樹と荒々しい岩場へ急に変貌したことに面食らいます。

鎖場を抜けるとまた景色が変わって、刃のような岩稜地帯に出ました。所々目も眩むような岩場に遭遇すると登山欲をかきたてられます。他の山ではあまりないような登山の急な変化に僕はいつの間にか夢中になっていたのです。

そしてついに巨大な岩場が僕の行く手を阻みました。高さ15m程の巨岩に吊るされた一本の鎖。やや滑りやすい岩のスキマに足を引っ掛けて鎖をしっかり持って踏ん張りながら登っていきます。ちょっとだけ高所恐怖症なので途中振り向いて下を見たい気持ちを我慢しながら岩を登り切ると岩が累々と積み重なった殺風景な場所に出ました。

標高2031m、乾徳山山頂へ到着です!

山頂からは大パノラマが広がっていて、北側を向けば幾重にも続く奥秩父の山々の中に黒金山(2232m)が大きな図体を見せていたのがイチバン目に留まりました。

西側には南アルプスの峰々、南側は甲府盆地が大きく広がっていて後ろに富士山が曇空の靄の向こうにスッとそびえていました。

山頂足元は深く切れ落ちていて高度感タップリ。

岩の上に座って休みながら今日の行程を回想しつつ、今回の登山のテーマだった『乾徳山人気の理由』を考えてみると・・・首都圏から日帰りで行ける距離で、適度に標高があって、牧歌的な景色あり、草原あり、岩場ありと沢山変化に富んだ登山が出来て、しかも景色もバツグンと来たらそりゃ人気だよね。

乾徳山の魅力を肌で感じることが出来た満足感と、壮大な展望に包まれた幸福感でしばらく山頂から離れることができませんでした。

乾徳山秋25 扇平を過ぎると景色はガラッと変わって薄暗い針葉樹の森の中の急登。ゴツゴツした岩が地面剥きだして滑りやすくて歩き辛いです。

乾徳山秋26 森から抜けると今度は岩場の連続。鎖場もあるし両手を使っての登りが続きます。

乾徳山秋27 岩場から振り返ると眼下には先ほど居た扇平の草原が遥か彼方。随分登ったなぁ。

乾徳山秋28 行く手を阻む巨大な岩石。これを越えなきゃ山頂へはたどり着けない・・・最後の難所に挑みます!

乾徳山秋29 岩場に掛かる一本の鎖。これを頼りに岩にしがみつきます。ちなみに迂回路はあるので鎖場が苦手な人も安心。

乾徳山秋30 悪戦苦闘してなんとか鎖場をよじ登った先は岩が累々と積み重なった平坦な場所。ここが乾徳山の山頂かな?

乾徳山秋31 ここが乾徳山山頂でした!最後の岩場はキツかったけどそれを越えて立った達成感はサイコーです!

乾徳山秋32 大パノラマ広がる乾徳山山頂からの景色。北側は右に黒金山(2232m)と左奥にゴトメキ(2247m)といった奥秩父の山々が。

乾徳山秋33 黒金山は重厚な山容でそびえていましたが、雲に包まれて完全な素顔は見せてくれません。残念。

乾徳山秋34 黒金山から西に延びる尾根にある鞍部、大ダオには草原が広がってます。

乾徳山秋35 南を向けば甲府盆地と富士山。うーんスバラシイ!曇天でイマイチ見栄えがしないけど僕にはこれで充分。

乾徳山秋37 下山して国道140号線から望んだ乾徳山は雲が山頂部を覆っていて完全な姿を望むことができませんでした。

乾徳山登山地図

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